福山哲郎外務副大臣の記者クラブ癒着宣言!

福山哲郎外務副大臣が、9月28日に開かれた初会見の場で「これから霞クラブの皆さまとは一緒に仕事をしていくことになりますので、是非よろしくお願いいたします」と述べた。*1
なんという癒着宣言!
ちなみに、霞クラブとは外務省を担当する記者クラブのこと。


福山氏と言えば、民主党の中堅議員の中でも政策通として知られており、個人的にもわりと好感を持っていた。外務副大臣としても適任者なのだと思う。だからこそ、(古い感覚のおっさん議員ならともかく)福山氏の発言を聞いて大きなため息が漏れてしまった。


外務大臣に就任した原理主義者・岡田克也氏によって大臣会見が開放されたことが耳目を集めたばかりだというのにね……。自分では違和感はなかったのだろうか。
さて、この福山外務副大臣の発言は、主に三つの観点から糾弾されてしかるべきである。

1) 理念的な観点から

一番の問題は、「語りかける」相手を間違っているということだ。確かに目の前にいるのは霞クラブに加盟している各社の記者なのかもしれない。「一緒に仕事をしていく」っていう意味がよく分からないが、確かに記者とのやりとりは今後多くなるだろう。
でも、それって違うでしょう。
よく政治家が失言や傲慢な発言をしたときに、「記者(マスコミ)の後ろには、1億2000万人の国民がいることを忘れている」という論調で非難されることがある。これは、確かに真実の一面ではあるが、マスコミは自分たちに都合のいいときしか「国民の存在」を持ち出さない。福山外務副大臣が語りかけるべきなのは、「霞クラブの一員としての記者」ではなくて、「国民に情報を伝えるプロフェッショナルとしての記者」に対してだろう。
自分で書きながら「重箱の隅をつつくような話だなぁ」と思いつつも、これって「なんで記者クラブを開放しなきゃいけないの?」っていう問いに対する重要な認識だと思うんだよなぁ。
まぁ、福山氏としては記者クラブ問題はプライオリティが低い(あるいは開放する必要がないと考えている)だけなのかもしれない。だとすると、それは別の問題につながってくる。

2) 省内ガバナンスの問題として

これは、より本質的な問題かもしれない。
つまり、構図としては、「記者クラブ開放」という英断を果たした岡田克也氏の部下である福山氏が、その精神に背くような発言をする。
省内の政治チーム内できちんと意思疎通ができているのか。より国益に直結する外交交渉の過程などで、ポロリがないか今から心配である。
まぁ、これは些細な問題ではあるが、局地的には異様に関心を持たれているテーマでもある。具体的には、上杉隆氏と神保哲生氏という二人の粘着質(※褒め言葉)なジャーナリスト。なにせ、上杉氏は小沢前代表の秘書が起訴された日の会見で、神保氏は鳩山氏の代表就任会見で、それぞれ記者クラブ問題について質問している筋金入りの開放派だ。大臣である岡田氏が重要性を認めて英断した以上は、そうした背景を踏まえて発言するべきだったのではないか。

3) 戦略的な観点から

単純に損得の勘定からしても、損はあっても得にはならない一言である。

第一に世論への影響について。この発言を聞いて民主党の支持に転じる人は皆無だと思うが、逆のパターンは大いにありそうだ。特に記者クラブ問題に否定的な「はてな村」を始めとするネット界では、影響があるのではないか。現にこうしてウェブ経由で会見を見てブログを書いている人間がいるわけだしね(まぁ、このブログの閲覧はたかがしれているけど)。国民がどう思うか、想像力が欠如しているとしか思えない。
こういう「勝負どころ」以外で支持率を落としていると、安倍内閣などの二の舞になってしまう(「勝負どころ」では、仮に支持率を落としても断行すべき政策はあると思うが、今回はそのケースに該当しないことは明らかだろう)。
なんというか、ホントにお粗末です……。(;´Д`)

第二に、些細な問題ながら非クラブ記者の心情についても触れておきたい。
北海道新聞高田昌幸氏のブログを読むと、開放後の外務大臣会見には『週刊プレイボーイ』の記者も出席していたようだ。*2福山氏の会見に『週刊プレイボーイ』の記者が参加していたかは定かでないが、仮に非クラブの記者が出席していたとすれば、冒頭の発言を聞いてあまりいい気はしないだろう。別に彼らにおもねる必要はないが、無意味に敵を増やさなくてもいいのではないか。

ではどうすればよかったのか

例えば「国民に日本の外交を伝えるという非常に重要な役割を担っている(記者の)皆さまには、今後お世話になると思います。よろしくお願いします」とでも挨拶していれば、誰も不満に思わなかったのにね。こういう小さなほころびが、民主党政権への失望を徐々に招くのではないか、非常に心配だ。


僕が気にしすぎですかね。杞憂だったらいいんですが。( ´ー`)y-~~~~~


記者クラブなんて、法律になんの規定もない「親睦団体」であるのに、なぜか官公庁や首相官邸の一角に居座り、そればかりか事務次官やら大臣やら総理大臣への取材権、アクセス権を独占している。報道の自由(freedom of press)の対象を記者クラブに限る法的根拠は、どこにもないはずだ。


神保氏の「リバイアサン論」や上杉氏の「官報複合体」を読みながら、「おどおどしいネーミングだなぁ」と思っていたけれど、福山氏の発言を踏まえてみると、やはり看過できないものがある。政官報の三角形については、今後も考えを述べていきたい。ヽ(´ー`)ノ